ゼームス坂沿いに現存している銅板葺き看板建築を紹介しよう。
撮影日 2021年11月25日、27日
撮影場所 東京都品川区南品川
①みの屋海苔店
通常なら左右に分けて設置する戸袋飾りを中央に寄せて一体化させ、幅が通常の2倍ある戸袋飾りにしている。
そこに店舗の屋号と店名を取り付け、看板にしている。
1912年(大正元年)に、長野・上諏訪にルーツを持つ米吉氏によって創業された。雪深い長野県の方々は、冬の間に上京し海苔の収穫を行っていたことから、東京の海苔店には長野出身者が多いのだそうだ。
「みの屋」という屋号は、米吉氏の修業先から頂いたものだそうだ。
18世紀はじめには品川の海で海苔の養殖が始まった。品川で作られた海苔は、浅草の海苔問屋に運ばれ「江戸名産浅草海苔」として全国に知られたようになった。
有名な「浅草海苔」も、実は「品川海苔」だったと言われている。
品川の漁業者が養殖方法を発明して海苔の大量生産が可能になり、全国各地に伝わったそうだ。昭和30 (1955)年に、品川での生産量は約9,500万枚におよんだが、昭和39(1964)年の東京オリンピックを前に、その幕を閉じた。
②小林商店
2戸建の長屋店舗併用住居。
頭部の銅板の葺き方を左右で変えている。
③みの屋海苔店と小林商店
④辰巳屋
お椀の形のように刳り抜かれた外壁と窓のある壁の間はバルコニーになっているようだ。
あまり見たことがない正面から少し奥まった形に建物の本体の壁がある額縁型の看板建築。
弁当メニューはカレーライス弁当が340円(税抜き)、しょうが焼き、かつカレー、スタミナカレー弁当がそれぞれ480円といろいろあるようだ。
⑤丹波クリーニング店
3階部分に窓はないが、両隣の建物と比べてみると、3階建に見える。
以前、3階部分は銅板葺きだったが、銅板葺き風に改装されてしまったようだ。
ゼームス坂
「琺瑯住所プレート 品川區南」でも紹介したが、再訪したので、もう少し掘り下げてみた。
坂を往復したので、写真の順番はアトランダムになっている。
ゼームス坂の案内板
坂の中ほどにある9階建て195戸、1983年(昭和58年)築の「三越ゼームス坂マンション」脇の一方通行の道を入ったマンション駐車場入口に次のような石碑が建っている。
ゼームス邸跡地について
此の処は南品川英国人ジョン・M・ジェームス邸跡地である。
M.ジェームスは慶応二年(1863年)二十八歳の時来日した。そして坂本竜馬等とも知り合い後に日本海軍創設に貢献し明治五年海軍省雇入れ以降幾多の変遷を経て住まいを此の地に構え隣人に慕われつつ明治四十一年七十歳にて没した。
墓は身延山本堂裏山に在り「日本帝国勲二等英国人甲比丹ゼームス之墓」と刻まれている。
その頃のジェームス在りし日を偲ぶ庭の欅も品川区の保存指定樹として樹齢百数十年の姿そのままに苔むす石垣と共に昔の面影を今に止めている。
昭和五十八年十月
エンジュの並木のゼームス坂通り
ハリエンジュが通りの両側に植えられ、初夏には黄色かかった白い房状の花が咲く。
ゼームス坂上バス停
ゼームス坂通り