歩・探・見・感

歩・探・見・感

ノスタルジック、レトロ、ディープそしてマイナーな世界へようこそ

国指定重要文化財「旧田中家住宅」で超弩級の旧町名「埼玉縣北足立郡南平柳村大字十二月田」を発見する。

アリオ川口へ向かうため、産業道路を走る。

いつも渋滞しているイメージのある産業道路だが、土曜日の午前中だからか空いていた。

自宅から30分くらいで着いてしまった。

駐車場で妻と娘と別れ、自分は自由行動。

この日も横浜市内を探索する予定にしていた。

しかし、並木元町公園に隣接する川口市立アートギャラリー・アトリアに気になるポスターが貼られていた。

「旧田中家住宅-川口の商家の贅と茶の文化-」が開催されていた。

無料ということなので入ってみることにした。

パネルや資料が展示されていた。一部だけ紹介することにしよう。

田中家のくらしのエピソード

手紙などの展示品

五月人形

特に説明書きはなかった。

動物の顔をした木彫りの彫刻が展示されていたのが印象的。

展示されている資料の中に旧町名のものがあった。

埼玉縣北足立郡南平柳村大字十二月田

左側の封筒には、住所を一度書いた後に"南"を付け足した跡が見える。

そういえば、川口市になってからのものだが「十二月田」の旧町名のものは、まだ紹介していなかった。随分歩き回っていろいろ関連情報を入手したはずなのに、現在お蔵入り状態。

「十二月田」は難読地名のひとつ、「じゅうにがつだ」ではなく「しわすだ」と読む。

地名の由来は、12月の大晦日の日に狐がやってきて、杉の葉で田植えをする真似をしたということから。

ありえへんだが、地名の由来なんてよくわからないものが多いよね。

川口市十二月田」のものは「埼玉氏の古い地名を探す」さんが書かれているので、載せさせて頂こう。

srd.hatenadiary.org


この時は、まだ、これの現物が存在していることを知る由もなかった。

係の人に旧田中家住宅に行く無料バスがあると言われたが、この時はまだ行く気がなかった。

見学を終え、受付辺りに貼ってあった時刻表を見る。

この時、旧田中家住宅発の方を見てしまっていた。

10:30を少し過ぎていて、11時まで待つのはなあと思い、横浜市探索に向かうべく、川口駅まで急ぐ。

家に帰ってから撮った写真を見るとアトリア発に10:45があった。

ちょうどこれに乗れたのに。

汗をかかなくて済んだのに。

川口駅に向かう途中、旧田中家住宅に行ってみようと気が変わった。

以前写真は撮っていたが、折角近くまで来たのだから、もう一度確認しに行こうかな、と思ったのだ。

この日は日傘が必要な天気だった。

暑い。

汗もかいてきた。

バスに乗ればよかったかな。

着いたのは11時頃、ちょうど外国人の団客体が出てきたところだった。

団体がいなくなってから写真を撮ることにした。

周りを歩いたり、近くにある旧町名「十二月田」の現存を確認したりしていた。

そのうち団体客はいなくなっていた。

しかし、人や自転車が通るので、しばし、道路の反対側の日陰で待機。

外観

いつ見ても素晴らしい!

埼玉県にもこんなすんばらしぃ近代建築があるんだよ。

展示会にあったパネルの説明

洋館は、煉瓦造3階建ての建築物で、1921年(大正10年)に建設が開始され、2年後の1923年(大正12年)に完成した。煉瓦造りの壁と垂直性を強調したような外観が目に付くこの建築物は、ルネサンス様式の流れを汲む西洋建築の古典的な特徴の他、近代の建築様式の特徴も見られる、複合的なデザインである。意匠優秀により国指定重要文化財に指定されているこの建物の中でも、特に目につきやすい、洋館正面部分の特徴を見ていく。

①イギリス積み煉瓦
建設当時の時代を感じさせる赤茶色の煉瓦は建築現場近くで、業者に一枚一枚焼かせたと伝わる。旧田中家住宅洋館の外観を構成する不可欠の要素である。煉瓦の積み方には種類があり、旧田中家住宅に使用されている様式は「イギリス積み」という様式である。装飾性はあまりないが最も堅実で合理的な煉瓦の積み方とされている。

イギリス積み
長手ばかりの段と小口だけの段を交互に重ねます。フランス積み程外観に装飾性はありま せんが、最も堅実で合理的な積み方です。

フランス積み
同じ段の外側に長手と小口を交互に並べます。装飾性が高いが構造的に弱く、比較的古い建築に用いられています。

②アーチ構造
旧田中家住宅を正面から見た際、最 階窓上部にアーチ構造が見られる。この角度の緩やかなアーチは、四心ア ーチと呼ばれる、チューダー様式という15~17世紀頃のイギリス建築に見られるアーチ構造に似ている。

③高さを強調したデザイン
旧田中家住宅は、一部が道路側に張り出されている。そうすることにより、 正面から見た張り出し部分が大きく見える。建物の高さを強調するのはゴシック建築の特徴と通じるものがある。

中に入ると時間がかかるし、自分は内装より外観の方に興味があるので、入館せずに外観だけ楽しませてもらうことにした。

そうすると玄関の右側に表札らしいものがあるのに気が付いた。

最初は、近くに寄ってもなんと書かれているかわからなかった。

しばらく見ていると、ようやく解読することができた。

超大物だった。

発見日  2024年10月13日

発見場所 埼玉県川口市末広1丁目7-2

埼玉縣北足立郡南平柳村
大字十二月田四十五番地

展示会で見た名刺や封筒の住所と同じだ。

歴史

1889年(明治22年)4月1日
町村制施行に伴い、北足立郡十二月田村連合戸長役場区域に属する元郷村・平柳領領家村・新井方村・十二月田村・樋爪村・二軒在家村・弥兵衛新田の7ヶ村が合併し、北足立郡南平柳村が成立した。

1933年(昭和8年)4月1日
北足立郡川口町、横曽根村青木村と合併・市制施行により川口市となり、南平柳村は消滅した。

この洋館が完成したのが1923年(大正12年)なので、この時に表札が付けられたとすると、101年前となる。
今まで自分が埼玉県で発見したものとしては最古のものかもしれない。

2025年(令和7年1月)より耐震改修工事を行われる予定になっている。

そのため、2024年(令和6年)12月27日が最終開館日となり、当面の間休館となるらしい。

いつまで休館されるのかリリースされていないが、長期間とある。

見学されたい方はお早めに。