探索の途中、ふと視界の端に“異様な存在感”を放つ看板が立っていた。 そこは、歴史ある大学や邸宅が点在する、いかにも**「文教地区・文京区」**らしい静かな住宅街。
一見して管理の行き届いた、あるマンションの植え込み。 「よくあるマナーの注意書きかな?」と思いながら近づいてみると、そこにはこう書かれていた。

「ペット類の排尿、排糞は固くお断りいたします。」
……排尿?排糞? 急に語彙レベルが広辞苑の奥深くへダイブしていった。
普段なら「おしっこ」「うんち」で済むところを、あえての漢字フル装備。 さすがは東大のお膝元。マンションの掲示物ひとつとっても、どこか「学術論文」か「生物学の教科書」のような厳粛な響きを帯びている。
■ 管理組合の「知的なディフェンス」
掲示主を見ると、そのマンションの管理組合。 住民の共同生活を守る組織による、至って真面目な公式見解なのだが、それにしても言葉選びが硬派すぎる。
おそらく、検討の段階ではもっとマイルドな案もあったはずだ。 「ペットのフンは持ち帰りましょう」とか。
しかし、ここは文教の街。 管理組合の役員たちが集まって議論した結果、「感情的に訴えるのはスマートではない。生物学的現象として淡々と、かつ厳格に事実を突きつけるのだ」という結論に達したのかもしれない。
「お断りいたします」という丁寧な敬語と、生物学用語の冷徹な響き。 そのギャップに、マンションの品位と静謐を守ろうとする、管理組合の静かなるプライドを感じてしまう。
■ ペット側の視点で考えるともっと面白い
文京区のマンション住まいの犬が、ふとこの看板を読んだらどう思うだろう。
「排…尿…? 管理組合の方から難しい言葉で言われると、なんだか恐縮して逆に緊張して出ないんだが」
猫ならこうだ。
「排糞って言われると、なんだか高尚な義務を課せられているみたいね。さすが文京区のマンションだわ」
看板ひとつで、ペットたちの心の声まで妙にドラマチック、かつ知的に変換されてしまう。
■ そして思った
「排尿・排糞」という言葉を、これほど堂々と掲げた看板を見たのは初めてだ。 街角で突然、論文のタイトルみたいな単語に出会うと、なんだか得した気分になる。
マンションという共同体の意思表示すら、街の知的なキャラクターに染まっていく。 次に探索するときは、またどこかで“語彙力の強すぎる掲示物”に出会えるかもしれない。
そう思うと、文京区の街歩きがもっと楽しくなる。
撮影日 2026年2月5日
撮影場所 東京都文京区