2026年2月10日、恵比寿駅付近。
何度も歩き慣れたはずの歩道を歩いていると、ふと、一枚の古い赤い看板が目に留まった。

鮮やかな赤に白抜きの文字。「東京都渋谷区」に続く文字は、時の流れで風化したのではない。そこには、明確な「消し去ろうとした意図」が残っていた。
現在の住所は「恵比寿南」。 もしこの看板が作られた当初から恵比寿南であったなら、わざわざ上から塗りつぶす必要はない。あの上塗りの下に隠されているのは、1970年(昭和45年)の住居表示変更によって役目を終えた、かつての町名だ。
おそらくそこには、「下通」あるいは「恵比寿下通」と記されていたのではないか。
この「下通」という町名については、かつて自分のブログでも取り上げたことがある。
駒沢通り沿いには今も「下通り五丁目」というバス停名が残っており、かつての町割りの記憶を現代に伝えている。
この道はこれまで幾度となく歩いてきたはずだ。それなのに、なぜ今日までこの看板の存在に気が付かなかったのだろう。
意図的に伏せられた旧町名と、今も平然と残るバス停の名前。その対比に気づけたのは、今日この時、ふと見上げた偶然があったからこそだ。
いつもと同じ景色の中に、まだこんな「見落とし」が隠れていたなんて。
そんな思いがけない出会いこそが、何より心に残る一日だった。