歩・探・見・感

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「ねこがきます!」——顔で語る猫、クロベエと出会った日

2月22日、「にゃん・にゃん・にゃん」と猫の鳴き声にちなんだ“猫の日”。SNSには愛猫の写真があふれ、街のあちこちで猫グッズが並ぶこの日、ふと、ある猫のことを思い出した。

それは、以前杉並区の住宅街を歩いていたときのこと。フェンスの前に立てられた一枚の看板が目に留まった。そこには、黄色い瞳の黒猫がどっしりと寝そべっていて、こう書かれていた。

「ねこがきます! つかいおわったら、ネットをかけましょう。」

一見すると、ゴミ置き場の注意書き。でも、その言葉の選び方には、どこかユーモアと優しさがにじんでいた。「猫が来るから気をつけてね」というより、「この子たちが来るから、ちゃんと準備してあげてね」と語りかけてくるような、そんな温もりがあった。

クロベエは、顔で語る。

看板の中の黒猫は、ただのイラストなのに、なぜか強い存在感を放っていた。特に目を引いたのは、そのやたらと大きな顔。体とのバランスをちょっと無視したような、堂々たる顔面。その猫に、思わず「クロベエ」と名付けた。

クロベエの顔は、ただ大きいだけじゃない。どこか達観したような表情で、通りすがる人々を見つめている。怒っているわけでも、甘えているわけでもない。ただ、そこにいて、すべてを見ている。そんな風格がある。

「ねこがきます!」という言葉も、クロベエの顔で読むと、まるで「来るぞ、俺が」と言っているように聞こえてくる。ゴミ置き場の注意書きなのに、なぜか笑ってしまう。けれどその裏には、猫と人が共に暮らすための、静かなルールと優しさがある。

杉並区のやさしい取り組み

実はこの看板、杉並区が地域の人々に向けて配布している「啓発プレート」のひとつ。猫や犬と人が気持ちよく共存できるように、ゴミ置き場にネットをかけることを呼びかけている。けれど、その伝え方がなんともユニークで、思わず足を止めてしまうのだ。

クロベエのような猫が、地域の中で自然と愛され、見守られていること。それは、行政の取り組みと住民のやさしさがうまく重なり合っている証なのかもしれない。

猫の日に思い出す、あの顔

猫の日に、クロベエの顔を思い出す。あの堂々たる表情、どっしりとした構え、そして何より、街の人々に愛されている空気感。

猫と人が共に生きる街には、こんな風に、ちょっと変わった、でも忘れられない猫がいる。顔が大きいというだけで、こんなにも物語が生まれるなんて、やっぱり猫って不思議な存在だ。

撮影日 2025年1月9日