歩・探・見・感

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ノスタルジック、レトロ、ディープそしてマイナーな世界へようこそ

パン屋ねこ・ミルの朝

ミルは小さな町のパン屋で働く看板猫。
毎朝、店主よりも早く起きて、焼きたてのフランスパンを抱えて店先に立つのが日課。

オレンジと白のしましま模様に、まんまるの黄色い目。白いエプロンをきゅっと結び、両手にはこんがり焼けたフランスパン。パンの香ばしい匂いが、朝の空気にふわりと溶けていく。

パン屋の名前は「ブーランジェリー・ル・ミュウ」。
ミルはこの店の顔であり、街の朝の風景の一部だった。

「おはよう、ミルちゃん。今日もいい香りね」
「ミルがいると、パンがもっとおいしそうに見えるわ」

通りすがりの人たちが、次々に声をかけていく。ミルはにっこりと微笑み、フランスパンをぎゅっと抱きしめる。言葉はなくても、その姿だけで、街の人たちの心をあたためていた。

小さなハプニング

ある朝のこと。
いつものようにパンを抱えて店先に立っていたミルは、ふとした拍子に足を滑らせてしまった。ふわりと宙を舞ったフランスパンが、ころころと道の先へ転がっていく。

「にゃっ!」

慌てて追いかけるミル。パンは道の角を曲がり、見えなくなってしまった。
そのとき、小さな手がパンを拾い上げた。

「これ、君の?」

そこにいたのは、見知らぬ少年。
ミルはぺこりと頭を下げてパンを受け取ると、少年の手にそっとパンを押し返した。

「えっ、いいの?」

ミルはにっこり笑って、くるりと背を向けた。エプロンのリボンが風に揺れる。
その日から、少年は毎朝パン屋の前を通るようになった。そして、ミルの隣に並んで立つようになった。

猫の日の朝

2月22日、猫の日。
今日は少しだけ早起きして、パン屋に立ち寄った。ミルは変わらず、空を見上げるようにフランスパンを抱えて立っていた。朝日が毛並みに反射して、まるで光の羽をまとっているようだった。

隣には、あの少年が手作りの紙袋を持って立っていた。袋には「ありがとう、ミル」と書かれている。

そして、ふと振り返ると、ミルの後ろ姿が見えた。
白いエプロンのリボンが風に揺れ、まっすぐ伸びたしっぽが静かに揺れている。
その背中には、言葉にしなくても伝わる、やさしさと誇りがにじんでいた。



撮影日  2025年1月16日

撮影場所 東京都小金井市