埼玉県深谷市の岡部駅から、午後の探索を始めた。駅前は静かで、どこか時間の流れがゆるやかに感じられる。南口を出て旧中山道を西へ。道沿いには住宅が並び、庭先には秋の草花が咲いていた。
この日は特に目的地を決めず、ただ歩くことを楽しんだ。道端には彼岸花が赤く咲き、田んぼでは稲が頭を垂れていた。すでに刈り取りを終えた区画もあり、秋の深まりを感じさせる。
日が傾きはじめたころ、そろそろ岡部駅へ戻ろうと、来た道を引き返していた。
そのときだった。
西の空に、巨大な雲が浮かんでいた。夕陽を背に受けて、雲の縁が金色に燃えている。まるで、空の海を泳ぐ獣の背中のようだった。背を丸め、尾を引きながら、静かに空を渡っていく。

(岡部駅へ戻る途中、西の空に現れた“雲の獣”。写真の下部に写る雲が、夕陽に照らされて背中を丸めた獣のように見えた。)
私はしばらくその場に立ち尽くし、スマホのカメラを構えた。画面越しに見るその姿は、まるで幻のようだった。
この雲には、何度も出会っている気がする。旅先でふと見上げた空に、決まって現れるこの雲。まるで、自分の歩みを見守ってくれているような気がするのだ。
「また、君に会えたな」
心の中でそうつぶやいて、私は再び歩き出した。
あとがき:
あの雲は、きっと今日も誰かの記憶を背負って、空の彼方へ旅をしているのだろう。
そして私は、またどこかの空の下で、君に会えるのを楽しみにしている。
撮影日 2025年9月29日
撮影場所 埼玉県深谷市岡