2026年2月23日、本郷通りを歩いていた。日差しはやわらかく、空気はほんのり春めいていて、コートの前を開けて歩けるほどの陽気だった。
前から歩いてきたカップルが、ふと足を止めた。男性がカメラを取り出し、何かを見上げてシャッターを切る。

本郷通り沿いの建物。何気ない風景の中に、視線を引き寄せる何かがある。
何を撮っていたのだろうと気になって、すれ違ったあとに振り返り、視線の先を追って見上げる。すると、ビルの屋上に満開の梅の花が、青空を背景にふわりと浮かび上がっていた。

コンクリートの上に咲く、やわらかな白。春は、こんなところから始まる。
コンクリートの街並みに、ふいに現れた白い花のかたまり。まるで空に浮かぶ雲のように、静かに春の訪れを告げていた。
誰かの視線がなければ、きっと気づかずに通り過ぎていた風景。けれど、こうして立ち止まり、見上げることで、街の中に潜む季節の気配がそっと姿を現す。
次はどんな景色に出会えるだろう——そんな期待が、本郷通りの午後を少しだけ特別なものに変えてくれる。