先日、信号待ちの最中にふと目が止まった。視覚障害者の方が押す「音響用押しボタン」のプレートだ。


そこには日本語、英語、中国語、韓国語による案内が並んでいる。しかし、その下の方に目を向けると、見慣れないアルファベット3文字の羅列が刻まれていた。
「ZHO」「VIE」「ARA」……。 一見すると何かの型番か秘密の暗号のようだが、実はこれ、世界とつながる「言語のショートカット」だった。
3文字の正体
このアルファベットは、ISO(国際標準化機構)が定めた言語コードだ。横に添えられたQRコードを読み取った際、どの言語で案内を表示するかをスマホに伝える役割を果たしている。
スペースの限られたプレートに、10ヶ国語以上の案内を詰め込むためのスマートな解決策というわけだ。
改めてリストを解読してみると、そのバリエーションに驚かされる。
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ZHO:中国語(自称である「中文:Zhongwen」から)
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FRE:フランス語
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GER:ドイツ語
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SPA:スペイン語
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ITA:イタリア語
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POR:ポルトガル語
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RUS:ロシア語
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TAI:タイ語
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VIE:ベトナム語
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IND:インドネシア語
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ARA:アラビア語
中国語が「CHI(Chinese)」ではなく「ZHO」である点など、言語学的なルーツが垣間見えるのが面白い。
街の変化を映す鏡
かつての案内表示といえば「日・英」のみ、あるいは「日・英・中・韓」の4ヶ国語が定番だった。しかし、今やこれほど多くの言語がサポートされている。
特にベトナム語(VIE)やインドネシア語(IND)が含まれている点に注目したい。観光客だけでなく、日本で暮らし、働く外国人が増えている現在の社会状況を如実に映し出している。
誰もが安全に道を渡れるように。 そんな切実な願いが、この小さな金属プレートに凝縮されている。
結び
信号待ちの数分間。 もしこのボタンを見かけたら、ぜひプレートの隅々までチェックしてみてほしい。
何気ない街角の風景の中に、世界中から集まる人々への「静かなおもてなし」が隠れていることに気づくはずだ。
撮影日 2026年2月5日
撮影場所 東京都文京区春日