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ノスタルジック、レトロ、ディープそしてマイナーな世界へようこそ

【ブログ裏話】古い看板をめぐる、AI三者検証(ファクトチェック)の舞台裏

小田急線鶴川駅(東京都町田市)の北側に、明治初期築(一説には築150年以上)の茅葺き古民家「みんなの古民家」がひっそりと佇んでいる。

ここはかつて、17代にわたり農業を営んできたという旧家(石川家)の母屋。現在はレンタルスペースなどとして地域に活用されているが、その土壁の風合いが残る軒下には、まるで時を止めたかのように古い木札や看板群が並べられている。

当ブログでは、先日アップした記事の中で、こうした軒下の遺物から地名や古看板の痕跡を追い、当時の地域の記憶を読み解く考察をお届けした。

citywalk2020.hatenablog.com

しかし、実はあの記事が完成するまでには、現代のテクノロジーをフルに活用し、3種類のAIを相互に照合しながら進める検証作業を行っていた。

実はこれまで、こうした文章のチェックはChatGPTだけに任せていた。Microsoft of Copilotについては、ビジネスの事務作業や最新ニュースの検索が中心で、こうした歴史や路上観察のようなニッチな趣味の領域は不得意だろうと思い込んでいたからだ。正直、そこまで深い指摘は返ってこないだろうと考えていた。

ところが、試しに読ませてみると、その先入観は見事に打ち砕かれた。ChatGPTとは全く異なる「別の視点」から、こちらの盲点を突く実に見事な指摘を返してきたのである。

この「泥臭い実地調査」と「先入観を超えた最新AIの使いこなし」を掛け合わせたプロセスこそ、ブログのジャンルを超えて面白い試みなのではないかと思い、少し手の内を明かしてみたい。

始まりは「現場の肉眼」と「数枚の写真」から

路上観察の醍醐味は、誰もが素通りする場所に眠る「物的な証拠」を見つけ出すことにある。今回、能ヶ谷の古民家で見つけた古い看板の左下隅には、風化してほぼ消えかけている「東京府南多摩郡鶴川村」の文字があった。

この興奮と、現場で撮影した数枚の写真をもとに記事を書き起こすにあたり、まずは画像認識とストーリーテリングが得意なAI(Gemini)に初稿を任せることにした。

AIにも一度に処理できる画像には制限や「得意・不得意」がある。他の一部のAIでは画像の同時読み込みに厳しい制限がかかることもあるが、このAIは数枚の現場写真をじっくりと読み込み、写り込んだディテールから当時の空気感やロマンを組み取るフットワークの軽さがある。そうして上がってきた初稿は、非常に熱量が高く、「明治の農村における民間薬の役割」をドラマチックに描き出す、素晴らしい読み物だった。

だが、ここで筆者はあえて立ち止まる。
「これは、路上観察ブログとして『踏み込みすぎ』ではないか?」と。

歴史検証のChatGPTと、データ照合のCopilot

そこで、この初稿のテキストを、今度は別の2つのAI「ChatGPT」と「Copilot」に放り込み、容赦のない校閲(ファクトチェック)を依頼した。毛色の違うAIの特性をぶつけ、多角的なチェックを行うためだ。

ちなみに、この時に使用したのは、先日当ブログで公開した下記の記事である。
citywalk2020.hatenablog.com

「事実誤認の有無」「過剰な解釈の排除」をAIに厳命するあの仕組みが、実際の現場でどう機能するのかを試したかったのだ。

すると、彼らから返ってきたのは、思わず唸るほど鋭い指摘の数々だった。

① ChatGPTからの指摘:『物語の暴走を止めよ』

今回、論理の骨組みや歴史的整合性の確認役として使ったChatGPTは、歴史的なロマンに浮かれる初稿に対して、冷徹な検証の目でメスを入れてきた。

「『地域医療のセーフティネット』や『中核拠点』という断定は、現状の写真レベルでは裏付け不足です。看板があることと、その家が医療の拠点だったことの間には危険な飛躍があります。『可能性』に留めるべきです」

さらに、「東京府が消滅した」という劇的な表現に対しても、「東京府と東京市が統合されて東京都へ『改組』された、と言う方が自然です」と、制度の正確な定義を求めてきた。

② Copilotからの指摘:『現代用語のミスマッチを正せ』

一方、ウェブ検索機能と実在データとの照合を重視するCopilotは、検索機能を通じて「みんなの古民家」の公式サイトや当主の過去のインタビュー記事を参照し、事実関係との整合性を確認してきた。

「『17代続く農家』『昭和52年まで生活の場だった』という情報は、公開されているインタビュー資料と整合しており妥当です。ただし、『セーフティネット』や『インフラ』といった現代の行政・福祉用語を明治期の農村にそのまま当てはめると、読者に誤解を与えます。具体的な機能描写(近隣の人が集まる場、など)に寄せるべきです」

複数AIによる「校閲」が、記事のファクトを強固にする

この2大AIによる容赦のないツッコミは、一見すると記事の勢いを削ぐものに見えるかもしれない。しかし、これこそが今回最も大きな発見だった。複数のAIの特性を競わせるようにしてチェックさせるこのプロセスそのものが、結果的に記事の歴史的精度(ファクト)を引き上げるための強力な武器になったのである。

「すごかった!」「絶対にこうだ!」という主観だけで突っ走る記事は、ライトで面白いが、時に行き過ぎた推論や誤認(ハルシネーション)を生む。

一方で、AIたちの指摘を受け入れ、

  • 「ここまでは、写真と現地案内から確実に言える『事実』」

  • 「ここから先は、当時の農村の背景から考えられる『推察・可能性』」

の境界線を、記事の中で自覚的に、誠実に引き直す。

この引き算の作業を行うことで、文章から根拠の薄い飛躍が消え、路上観察としての熱量を保ちながら、過剰な断定を抑えたより検証可能性の高いフィールドワーク報告へと昇華した。AIにただ書かせるのではなく、AI同士の“癖”をぶつけて相互検証するこのやり方は、まさに現代のハイレベルな編集プロセスそのものだ。

令和のデジタル路上観察スタイル

こうして、すべての指摘をクリアし、事実と推察のバランスをきれいに調整したのが、先日の能ヶ谷の記事だった。

  • Geminiが写真の海からディテールとロマンをすくい上げ、

  • ChatGPTが論理の骨組みを厳格に監視し、

  • Copilotが世間のデータと言葉の違和感をチェックする。

それぞれのAIの長所をパズルのように組み合わせることで、1人の観察者では辿り着けなかった深度まで、地名の記憶を掘り下げることができた。

ネットの地図を眺めるだけでなく、現場を歩く「人間の肉眼」と、それを補佐する「複数のAIの視点」。これらを組み合わせる新しいデジタルフィールドワークの形に、自身、路上観察の未来の可能性を感じている。

AIを単なる執筆の道具として使うのではなく、複数の異なる視点を持つ「優秀な編集チーム」として付き合っていく時代が、すでに始まっているのかもしれない。

当ブログでは、今後もこうした「確かな事実」と「そこから見えるロマン」を、誠実な線引きとともに記録していきたい。

作成日 2026年5月27日