川越市市街地にも旧町名の痕跡がいくつかあるのだが、探索に時間がかかりそうな遠いところから開始することにした。
目撃情報があった旧町名は、川越市豊田本(とよたほん)3丁目にあるようだ。
自分の地図には、豊田本3丁目はなかった。
豊田本があるだけだ。
いつ豊田本3丁目ができたんだ?
そんなことも知らずに、川越駅西口から遥か先の豊田本へいつものように徒歩で向かう。
適当に歩いていたら、ユーキャンロジと山村学園高校のグラウンドとの間の道を通ることになった。
グランドでは、野球部の監督らしき人が、部員とミーティングをしていた。サッカー部は練習をしていた。
その先を見ると一本道の農道が見えた。
はてしなく続いている・・・
豊田本1丁目の風景
この先は田んぼばっかりだ。
これも小江戸川越だ。
何分くらい歩いただろうか、いつのまにか豊田本2丁目にきていた。
同じように周りは見渡す限り、まだ田んぼばっかりだ。
誰も歩いていない。車も通らない。でもトラクターが動いていた。
豊田本3丁目もこんな具合なのかと、とても不安になる。
途中に善長寺薬師堂があった。
豊田本2丁目6-12のプレート
薬師堂に設置されていた住所プレート。最新の住所になっていた。(旧豊田本570)
蜘蛛の巣が張っていた。
石灯籠の左に倶利伽羅不動(くりからふどう)
石灯籠の刻字は「奉献薬師如来・・」「文化七年」(1810)
石灯籠の下部はコンクリートで補修されている。折れてしまったのだろうか。
倶利伽羅不動の刻字は「宝暦十辰九月吉日」(1760)「豊田村講中施主」
倶利伽羅明王、倶利伽羅龍王とも呼ばれ、不動明王の化身で、黒龍が炎に包まれた利剣に絡み、剣先から呑み込もうとしている姿が彫られている。これは煩悩や邪悪を炎で焼き尽くす形相を表しており、滝や湧水などの水辺に水神として祀られることが多いそうだ。
倶利迦羅とは、サンスクリット語のkulikaの音写である。クリカはインドで八大龍王の内の一王の名であり、『陀羅尼集経』では鳩利龍王とも訳されている。
倶利伽羅不動は剣先が龍の口の中に入っているのが多いが、この俱利伽羅不動の剣先は口の手前にある。
更に、普通は光背に火焔が彫られるが、こちらはその跡がない。
見る人が見ると龍の耳や指や顔が、人間くさくみえるようだが、自分にはわからない。
高さ約75.2cm、幅約31cm
右の石灯籠に彫られていた。
「豊田本村 願主大畑・・」
下部が補修されていて読めない。
薬師堂は眼病にご利益があるようで、「向かいめ」の絵馬が奉納されていた。
薬師堂付近から川越市街を望む。
ここまで、約1時間、随分歩いてきた。
いつになったら3丁目に着くんだ。
ここで思った。
この道を通らされたということは、もしかしたら、自分は薬師堂と倶利伽羅不動に呼ばれたのかもしれない。
ようやく3丁目に着いた。
水神宮様がお出迎え。
明治13年(1880) 高さ約82cm、幅約56cm
この水神宮様を後にして、探索を開始した。
たばこ販売店の琺瑯看板がある店舗は、大体たばこ店の看板を設置してあることが多いので、それを頼りに探すが、そんなものは見つからない。
大体店が見当たらない。
しかし、少し歩いていると、店と思えないような店があった。
定休日 日曜日 月曜日
営業時間 午前10時~午後6時
という張紙がしてあるので、営業しているようだ。
その店舗内に、例の赤いのものが見えた。
発見日 2021年12月24日
発見場所 埼玉県川越市豊田本3丁目
何と村時代のものだった。
歴史
1889年(明治22年)4月1日
大袋村、大袋新田、藤倉村、山城村、増形村が合併して日東村(にっとうむら)が、大塚新田村、南大塚村、豊田本村、豊田新田、池辺村が合併して大田村(おおたむら)がそれぞれ成立する。
1943年(昭和18年)11月3日
日東村と大田村が合併し、大東村が発足。
村名は大田村の大、日東村の東を組み合わせて大東村となった。
1955年(昭和30年)4月1日
川越市に編入され、消滅。
ということは、65年以上も前からここに存在していることになる。
この琺瑯看板が店内にあったということは、店舗の前面は改装して付け足したのかもしれない。
町名地番整理実施
2017年(平成29年)3月6日
豊田本の一部、小室の一部、野田の一部より豊田本一丁目が成立。
豊田本の一部、小室の一部の一部より豊田本二丁目が成立。
2018年(平成30年)3月5日
豊田本の一部、池辺の一部より豊田本三丁目が成立。
豊田本の一部、豊田新田の一部より四丁目が成立。
2019年(平成31年)3月4日
豊田本の一部、豊田新田の一部、藤倉の一部より豊田本五丁目が成立。
自分が持っている地図は、2016年9月版と古いものだった。
それ以降に町名地番整理が実施されたので、ないのは当然だった。
冬なのに菜の花
他にも菜の花の株があったが、花が咲いていたのはこの株だけだった。
小石だらけの畑に付けられていた動物の足跡。
犬?猫? はたまた 狸?狐?