さいたま市緑区の公園で、妙に存在感のある遊具に出会った。
緑色の塊がどん、と座り込んでいる。
近づいてみると、それは「イモムシ」を模した遊具だった。

頭が凸凹していて、いくつかの塊が連なっているように見え、短い足がいくつも生えている。
足元には、それぞれ違うデザインの靴。
背中には、デコボコとした突起が並んでいる。
正面から見ると、どこか愛嬌があるのに、
少し角度を変えると、急に「何か別のもの」に見えてくる。
このとき頭に浮かんだのは、遊具ではなく、
「都市に棲みついた、外来の妖怪かもしれない」という仮説だった。
公式情報から見えてくる「外来性」
このイモムシ遊具について、メーカーの広報担当者に取材した記事がある。
それによれば、
・アメリカ製の遊具であること
・国内では中村製作所が販売していたこと
・受注生産で、緑のほかに赤・青・黄色・オレンジなどの色違いがあること
・モチーフはイモムシであること
・くぐる、のぼるといった動的な遊びに加え、背中の模様で知育的な遊びも想定されていること
といった事実が分かっている。

さらに、横浜市の公園では、2010年前後にこの遊具がいくつか設置されたという。
当初は「気持ち悪い」と不評だったが、今では特に撤去を求める声もなく、
周囲の風景に馴染んできているらしい。
海外からやってきて、最初は拒まれながらも、
いつの間にか地域に溶け込んでいく存在。
この経緯だけでも、すでに「外来妖怪」の物語が始まっている。
外来百足童子という妖怪設定
ここから先は、観察と想像を混ぜながら、
このイモムシ遊具を「外来百足童子(がいらい・むかでどうじ)」という都市妖怪として記述してみたい。
名称と分類
名称:外来百足童子(がいらい・むかでどうじ)
分類:外来系・多足型・公園棲妖怪
「外来」はアメリカ製であること、
「百足」は多数の足と、それぞれ異なる靴の存在、
「童子」は子どもと強く結びついた存在であることを示している。
形態:イモムシの姿を借りた多足の童子
・丸い頭部がいくつか連なり、体節のようなリズムをつくっている
・短い足が左右に生え、それぞれに違う靴が履かされている
・背中には、テントウムシを思わせる丸い突起が並ぶ
・色違いの亜種(赤・青・黄色・オレンジ、ピンクなど)が各地の公園で確認されている
・正面・斜め・横からで、別々の生き物のように見える多面性を持つ

イモムシの姿を借りてはいるが、
足元の靴や、背中の突起の配置は、
「ただの虫」から少しずつ外れていくための工夫のようにも見える。
背中のテントウムシは護符かもしれない
メーカーの説明では、背中のデコボコにはテントウムシの絵柄があり、
知育的な遊びの要素としてデザインされているという。
妖怪として見るなら、これは
「外来の身でありながら、日本の公園に適応するために身につけた護符」
と読むこともできる。
外から来たものが、新しい土地で生き延びるために、
その土地の小さな守り神を背負う。
外来百足童子の背中は、そうした折衷の痕跡にも見える。
靴は“記憶の擬態”
足元の靴は、ひとつひとつデザインが違う。
スニーカーのようなもの、ブーツのようなもの、
どこかで見たことがあるような、ないような形が並んでいる。
これは、外来百足童子が、
これまで出会ってきた子どもたちの足元を真似ているのかもしれない。
・遊びに来た子どもの靴を観察する
・その形や色を少しずつ取り込んでいく
・やがて、自分の足元が「記憶のコラージュ」のようになっていく
そう考えると、足の数が多いことにも意味が出てくる。
多くの足は、多くの記憶を貼り付けるためのスペースなのかもしれない。
生息地と分布:2010年前後の公園に現れる
横浜市の事例では、このイモムシ遊具は2010年前後に複数の公園へ設置されたという。
どの遊具を置くかは担当者の裁量が大きく、
ある担当者の「これを置きたい」という意向が通って設置されたケースもあるらしい。
妖怪として見るなら、
外来百足童子は「呼ばれた場所にだけ現れる」存在だ。
・自治体の担当者が、カタログの中からこのイモムシを選ぶ
・上長の承認が下りる
・数か月後、公園の片隅に、緑やピンクのイモムシが現れる
この流れは、
「人間側の都合で召喚される妖怪」
という物語としても読める。
当初は不評、やがて馴染む
設置当初、この遊具は「気持ち悪い」と言われることも多かったという。
しかし時間が経つにつれ、撤去を求める声は聞かれなくなり、
今では公園の風景の一部として受け入れられている。
外来百足童子は、
最初は異物として扱われながらも、
子どもたちに跨られ、くぐられ、
表面がすり減っていくうちに、
その土地の妖怪として定着していく。
表面の傷や色の退色は、
この妖怪の「齢(よわい)」を示す指標でもある。
外来百足童子の生態記録
ここまでの観察と情報をもとに、
外来百足童子の“生態”を、簡単な図鑑風にまとめてみる。
生息地
・2010年前後に改修・整備された公園
・自治体の担当者が「置いてみたい」と思った場所
・砂場や遊具エリアの端、すべり台やブランコの近くなど、
子どもの動線の途中に座り込むことが多い
行動
・子どもが跨ると、静かに受け止める
・くぐられると、しばし眠る
・背中の突起は、数を数んだり、模様をなぞったりする手を受け入れる
・夜になると、公園の音をひとりで聞いている
性質
・当初は「気持ち悪い」と言われがちだが、数年で風景に溶け込む
・色違いの亜種が、近隣の公園に現れることがある
・人を飲み込むという噂もあるが、公式には強く否定されている
・足元の靴は、過去に出会った子どもたちの記憶を模した擬態とされる
おわりに:公園に棲む外来妖怪を見る視線
このイモムシ遊具について、
「ちょっとホラーな遊具が話題になった」という紹介で終えることもできる。
けれど、造形をじっと眺めていると、
公式な説明だけでは収まりきらない「余白」のようなものが見えてくる。
・なぜ、こんな足元のデザインになったのか
・なぜ、テントウムシが背中に貼り付いているのか
・なぜ、2010年前後に、いくつかの公園へまとまって現れたのか
その答えを、あえて「外来百足童子」という妖怪の物語として受け取ってみると、
公園の風景が、少しだけ違って見えてくる。
あなたの近所の公園にも、
色違いの外来百足童子が、何食わぬ顔で座っているかもしれない。
撮影日 2026年5月12日
撮影場所 埼玉県さいたま市緑区