【写真①:桜並木+青空の広い景色】

与野公園は、桜がまさに満開だった。
青空の下、淡いピンクが風に揺れて、
園内全体が春の光に包まれていた。
バラ園が有名な公園だけれど、
春の桜も負けていない。
むしろ、バラの季節とは違う“柔らかい華やかさ”がある。
そんな中を歩いていたとき、
ふと、横から視線を感じた。
■ 視線の主は、一本の木だった
桜の並木道を抜けていく途中、
なぜか“見られている”気配がした。
振り返ると、そこには一本のプラタナス(たぶん)。
ただの木のはずなのに、どうも違う。
幹の模様が、まるで“顔”に見えるのだ。
【写真②:桜のトンネル状の並木】

桜のトンネルの静けさの中で、
その木だけが別の時間を生きているように見えた。
■ 幹の模様が語りかけてくる

近づいてみると、さらに妙だ。
まだら模様が頬骨のように盛り上がり、
影が目の窪みのように沈んでいる。
中央の筋は鼻筋に見えなくもない。
人間はランダムな模様に意味を見出す生き物だ。
心理学では「パレイドリア」と呼ばれる現象。
雲が動物に見えたり、コンセントが顔に見えたりする、あれだ。
でも、この木はそのレベルを超えている。
“顔に見える”というより、
“顔としてそこにいる” と言ったほうが近い。
■ この木が立っている場所

翌日あらためて訪れて、少し離れた場所から撮ってみた。
すると、この木が与野公園の中でどんな存在として立っているのか、
はっきりと分かった。
桜の華やかさの中で、ひときわ静かに、
まるで公園の空気を整える“番人”のように佇んでいる。
木の周りで人々がくつろいでいるのも印象的だった。
この木は、ただそこに立っているだけなのに、
公園の時間をゆっくりと支えているように見える。
🌳 妖怪図鑑:樹肌の面(きはだのめん)
ここからは、いつもの“街角妖怪シリーズ”としての解釈。
🌲 妖怪名:樹肌の面(きはだのめん)
生息地: 与野公園
種族: 自然発生型・樹木妖怪
性質: 温厚、観察者
特徴: 表情が変わる、風と会話する
好物: 静けさ
嫌い: 落ち葉を蹴散らす人
■ 妖怪の由来
長い年月、公園を訪れる人々の気配が幹に染み込み、
ある日ふと“顔”として浮かび上がったと言われる。
その表情は、喜怒哀楽というより、
ただ“そこにいる”という存在感そのもの。
桜の季節には少しだけ柔らかく、
夏には影が濃くなり、
秋には落ち葉と同じ色を帯び、
冬には静かに眠る。
【写真③:桜のアップ】

■ 小さな物語:また来いよ
公園を出る前にもう一度振り返ると、
さっきより少しだけ優しい表情に見えた。
「また来いよ」と言われた気がして、
その日から与野公園を歩く楽しみがひとつ増えた。
撮影日 2026年4月2、3日